用語集
本書で使う主要な記号と用語をまとめる。詳しい説明は各章を参照。
記号
| 記号 | 読み・意味 | 初出 |
|---|---|---|
| \(T\) | 温度(K) | 第1章 |
| \(M\) | 磁化 | 第1章 |
| \(\chi\) | 磁化率(\(\chi = M/H\)) | 第1章 |
| \(H\) | 磁場 | 第1章 |
| \(\Delta_{\mathrm{cf}}\) | 結晶場分裂幅(t₂g と e_g のエネルギー差) | 第2章 |
| \(S\) | スピン量子数 | 第2章 |
| \(2S+1\) | スピン多重度(縮重度) | 第2章 |
| \(d_0,\ d_{\mathrm{ex}}\) | 基底状態・励起状態の縮重度(\(g\) 因子と区別するため \(d\) を使う) | 第3章 |
| \(\Delta\) | 励起エネルギー(基底状態から励起状態への差。K 単位で表すことが多い) | 第3章 |
| \(k_{\mathrm B}\) | ボルツマン定数 | 第3章 |
| \(g\) | g 因子(磁気モーメントとスピンを結ぶ係数) | 第4章 |
| \(\mu_{\mathrm B}\) | ボーア磁子 | 第6章 |
| \(H_c\) | 磁場誘起転移の転移磁場 | 第6章 |
用語
- LaCoO₃
- ランタン・コバルト酸化物。ペロブスカイト型構造をもち、中心の Co³⁺ がスピン状態を変えることで特異な磁性を示す。本書の主役。
- CoO₆ 八面体
- Co³⁺ を 6 個の酸素が八面体状に取り囲んだ単位。結晶場をつくり、本書で扱う物理のほぼすべての舞台。
- 結晶場(けっしょうば)
- 周囲の酸素がつくる静電的環境。d 軌道を t₂g(下 3 本)と e_g(上 2 本)に分裂させる。
- Hund 結合(フント結合)
- 同じ向きのスピンをできるだけ多く揃えようとする力。結晶場分裂と綱引きをする。
- スピン状態(LS / IS / HS)
- Co³⁺(d⁶)の電子配置。低スピン LS(\(S=0\), 非磁性)、中間スピン IS(\(S=1\))、高スピン HS(\(S=2\))の三通り。
- ボルツマン因子
- ある状態の占有が温度に対して \(\exp(-\Delta/k_{\mathrm B}T)\) に比例すること。励起状態の人口を見積もる基本道具。
- 二準位模型
- 非磁性の基底状態と磁性の励起状態の二つだけを考える最小模型。100 K 付近の磁化率の山を定性的に説明する。
- スピン状態転移/スピンクロスオーバー
- 温度・磁場・圧力・置換などにより Co³⁺ のスピン状態の占有が変化する現象。
- Co_I / Co_II / Co_III
- 高磁場・置換系で得た磁化データを説明するために導入された、現象論的な Co の分類(顕微鏡で見分けられる実体ではない)。Co_I は非磁性基底+低励起エネルギー(約 135 K, \(g=3.35\), HS 的)で 60 T 転移を担う少数派、Co_II は非磁性基底+高励起エネルギー(約 220〜250 K, \(g\approx2.0\), IS 的)の多数派、Co_III は基底状態そのものが磁性で Sr 置換などで生じる。第6章以降で扱う。数値はモデルのフィット値であり、直接の観測量ではない。