7  周期性をどれだけ標本化するか

周期的な結晶の電子は、連続に広がる「波数」をもつ。
その連続を、いくつの点で代表させれば、答えはぐらつかないのか。

この章のゴール:k 点メッシュを「周期性の標本化」として理解し、逆格子のさわりに「周期のものさし」として触れ、k 点収束を ecutwfc と同じくエネルギー差で判断できるようになる。

前章で、計算機に渡すつまみをひとつ手に入れた。ecutwfc ――電子の波をどこまで細かく刻むかの上限である。そして収束を、絶対値ではなくエネルギーの差で読む作法を覚えた。上げ続けるのではなく、差が目標を下回ったところで止める。本章は、それと並ぶ二つ目のつまみを手に入れる章だ。ただし今度のつまみは、実空間ではなく、結晶の周期が生むもう一つの空間――波数の空間――に置かれている。まずは、その空間がどこから来るのかを見にいこう。

1 周期性は波数という第二の空間を生む

シリコンの結晶では、同じ原子配置がどこまでも繰り返す。だから電子が感じるポテンシャル \(V\) も、格子ベクトル \(\mathbf{R}\) だけ動かしても元と同じ形に戻る。

\[ V(\mathbf{r} + \mathbf{R}) = V(\mathbf{r}). \]

ここで一歩、メカニズムに踏み込もう。同じ風景が一定間隔で繰り返す土地を、定常的な波が伝わっていくとき、波に許される自由はひとつしかない。隣のセルへ移るあいだに、位相をどれだけ進めるか、それだけである。波の形そのものはセルごとに同じでよく、変えられるのは「一つ隣でどれだけ進んだ位相になっているか」だけだ。この、1 セルあたりの位相の進みを長さで割った量を、波数 \(\mathbf{k}\) と呼ぶ。電子の状態は、平面波の位相因子と、格子の周期で繰り返す部分 \(u_{\mathbf{k}}\) との積に書ける。

\[ \psi_{\mathbf{k}}(\mathbf{r}) = e^{i\,\mathbf{k}\cdot\mathbf{r}}\; u_{\mathbf{k}}(\mathbf{r}), \qquad u_{\mathbf{k}}(\mathbf{r} + \mathbf{R}) = u_{\mathbf{k}}(\mathbf{r}). \]

位相はどんな値でも取れるから、\(\mathbf{k}\) は連続な量である。実空間の周期性が、この連続なラベルを生んだ。そして \(\mathbf{k}\) ひとつごとに方程式を解くと、エネルギーの梯子 \(\varepsilon_1(\mathbf{k}),\ \varepsilon_2(\mathbf{k}),\dots\) が決まる。これがバンドだ。電子の状態は、こうして連続な \(\mathbf{k}\) の上に広がっている。これが、結晶が私たちに与える第二の空間である。

ここで肝心なのは、物理量がこの \(\mathbf{k}\) の全体から決まる、という点だ。現実の結晶はおよそ \(10^{23}\) 個ものセルからなり、許される \(\mathbf{k}\) は隙間なく詰まって連続体をなす。全エネルギーも電子密度も、占有された各状態の寄与を、すべての \(\mathbf{k}\) について足し上げて初めて得られる。和は連続なので、数学の上では積分になる。

\[ \langle X\rangle = \frac{1}{V_\text{BZ}} \int_\text{BZ} X(\mathbf{k})\, d\mathbf{k}. \]

つまり、ひとつの数を取り出すには、\(\mathbf{k}\) について積分しなければならない。だが計算機は連続な積分をそのままは扱えない。有限個の点で代表させるほかない。そこに、本章のつまみが立つ。

flowchart TB
    R["実空間の周期ポテンシャル<br>V(r+R)=V(r)"]
    K["第一ブリュアンゾーンを<br>連続に埋める波数 k"]
    I["物理量 = BZ 全体に<br>わたる k の和(積分)"]
    S["有限個の k 点で<br>代表する(標本化)"]
    M["k メッシュ<br>例 6×6×6"]
    R -->|ブロッホの定理| K
    K --> I
    I --> S
    S --> M
    classDef settled fill:#d4edda,stroke:#28a745,color:#000;
    classDef knob fill:#fff3cd,stroke:#ffc107,color:#000;
    class R,K,I settled;
    class S,M knob;
図 1: 周期性から物理量までの道筋。実空間の周期が連続な k を生み、その k 全体にわたる和(積分)を、有限個の k 点で代表させる。標本化の細かさ(メッシュ)が、ここでのつまみである。

2 逆格子 ― 周期の言葉

では、その \(\mathbf{k}\) はどこに住んでいて、住まいはどれくらいの広さなのか。これを言うのに、逆格子という言葉が要る。深い理屈には立ち入らず、必要な分だけ持っていこう。

実空間の格子を 3 本のベクトル \(\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\mathbf{a}_3\) で表したとき、それに対して逆格子ベクトル \(\mathbf{b}_1,\mathbf{b}_2,\mathbf{b}_3\) を、

\[ \mathbf{a}_i\cdot\mathbf{b}_j = 2\pi\,\delta_{ij} \]

で定める。\(\mathbf{b}_i\) の整数倍の組み合わせ全体が逆格子で、これも一つの格子だが、住む場所は波数の空間、単位は長さの逆数である。公式を暗記する必要はない。握っておくのは一言――逆格子とは、結晶と同じ周期を共有する波数たちが作る格子だ、ということだけでよい。

そこから、本章に要る事実が二つ出る。ひとつ、\(\mathbf{k}\) と、それに逆格子ベクトルを足した \(\mathbf{k}+\mathbf{G}\) は、物理的に同じ状態を指す。だから \(\mathbf{k}\) は逆格子の一区画ぶんだけ見れば足りる。その一区画が第一ブリュアンゾーン(BZ)であり、\(\mathbf{k}\) が動き回る舞台だ。ふたつ、逆格子の目盛りは実空間の目盛りの逆数になる。\(|\mathbf{b}| \sim 2\pi/a\)。実空間の箱が大きいほど、波数の舞台は小さくなる。BZ の広さを測るものさしは、おおよそ \(2\pi/a\) である。

ここで、まず鉛筆で広さを当ててみよう。シリコンの実空間のものさしは格子定数 \(a \approx 5.431\ \mathrm{\text{Å}}\) だった。すると波数のものさしは

\[ \frac{2\pi}{a} \approx \frac{6.283}{5.431}\ \mathrm{\text{Å}^{-1}} \approx 1.16\ \mathrm{\text{Å}^{-1}}. \]

第2章で換算した celldm(1) \(= a \approx 10.26\ \text{bohr}\) から出しても、\(2\pi/a \approx 0.61\ \text{bohr}^{-1}\) で、\(1\ \text{bohr}^{-1} = 1/0.529\ \mathrm{\text{Å}^{-1}} \approx 1.89\ \mathrm{\text{Å}^{-1}}\) を掛ければ同じく \(1.16\ \mathrm{\text{Å}^{-1}}\)。二つの単位系から同じ数が出て、入力で決めた celldm がここで効いていることも確かめられた。オーダーとしても、BZ の広さが逆オングストロームの程度になるのは、長さの逆数として正しい。

この \(1.16\ \mathrm{\text{Å}^{-1}}\) を、たとえば 6 等分する標本化を考えると、\(\mathbf{k}\) 点の間隔は

\[ \frac{2\pi/a}{6} \approx \frac{1.16}{6}\ \mathrm{\text{Å}^{-1}} \approx 0.19\ \mathrm{\text{Å}^{-1}} \]

で、ゾーンを一方向あたりおよそ 6 点で横断することになる。では 6 点で足りるのか。それは幾何だけでは言い切れない。実際に値が落ち着くかどうかで読む。次節がその読み方だ。

3 k 点メッシュ:連続を有限で代表させる

前節の積分を、計算機は有限個の \(\mathbf{k}\) 点での重み付き和に置き換える。

\[ \langle X\rangle = \frac{1}{V_\text{BZ}} \int_\text{BZ} X(\mathbf{k})\, d\mathbf{k} \;\approx\; \sum_i w_i\, X(\mathbf{k}_i). \]

これは数値積分そのものだ。連続な被積分関数を、限られた標本点でどれだけ忠実に代表できるか、という腕の見せどころである。

代表点の選び方として広く使われるのが、ブリュアンゾーンに一様な格子を敷く流儀で、Monkhorst–Pack のメッシュと呼ばれる。立方晶のシリコンなら、これを \(6\times6\times6\) のように書く。逆格子の各軸を 6 等分し、ゾーンを均等に埋める \(216\) 点ということだ。入力では K_POINTS の区画にこれを宣言する(たとえば K_POINTS automatic と書いて、続けて 6 6 6 0 0 0 のように刻み数を渡す)。後ろの三つ 0 0 0 は、メッシュを原点からずらさない――\(\Gamma\) 点をそのまま含む――という指定で、本章の収束表もこの揃え方で測っている。メッシュの密度が、ここでのつまみである。粗ければ点が少なく、安く済むが積分は荒い。細かければ点が増え、正確になるが高くつく。ecutwfc とまったく同じ性格のダイヤルだ。

実際の点数は、見かけの \(216\) よりずっと少なくて済む。ダイヤモンド型のシリコンは対称性が高く、\(216\) 点の多くは対称操作で互いに移り合う。計算機はその中から独立な(既約な)一握りだけを実際に解き、対称性で決まる重みを掛けて和を取る。だから \(6\times6\times6\) は、\(216\) 回の別々の計算よりはるかに軽い。

物理量はブリュアンゾーン全体にわたる \(\mathbf{k}\) の和(積分)であり、k 点メッシュはその和を有限個の点で代表させる標本化である。ecutwfc が波の解像度を刻むのと同じ意味で、メッシュは周期空間の解像度を刻む。

つまみが二つに増えた。ecutwfc は平面波の側で波の細かさを決め、k 点メッシュは波数空間の側で標本化の細かさを決める。住む空間は違っても、両者は同じ種類のダイヤル――答えが動かなくなるまで回す離散化のつまみ――であり、同じやり方で読む。すなわち、差で読む。

4 k 点収束を読む

読み方の規則は、前章の ecutwfc と同じだ。絶対値そのものを追いかけない。メッシュを一段細かくしたとき、値がどれだけ動くかを見る。その変化が、目当ての量に求める精度を下回ったところで止める。

下の表は、その収束を実際に測った記録である。シリコンの2原子セルを Quantum ESPRESSO(pw.x、v7.5)で計算し、ecutwfc を 60 Ry に固定したまま、メッシュだけを \(4\times4\times4\) から \(12\times12\times12\) へ刻んでいったときの全エネルギーを並べた。十分に密な \(12\times12\times12\) を基準にとり、そこからの差と、一段刻むごとの隣どうしの差を、どちらも原子あたりの \(\mathrm{meV}\) に直してある(セルは2原子なので、差は半分にして1原子あたりにした)。二列目の既約 k 点数は、対称性でメッシュを畳んだあと、計算機が実際に解いた点の数である。

k メッシュ(K_POINTS 既約 k 点数 全エネルギー(Ry, 2原子) 隣接差(meV/atom) \(12^3\) 基準の差(meV/atom)
4 4 4 0 0 0 8 \(-93.439411\) \(94.10\)
6 6 6 0 0 0 16 \(-93.451490\) \(82.17\) \(11.93\)
8 8 8 0 0 0 29 \(-93.452967\) \(10.05\) \(1.88\)
10 10 10 0 0 0 47 \(-93.453200\) \(1.59\) \(0.29\)
12 12 12 0 0 0 72 \(-93.453243\) \(0.29\) \(0.00\)

まず、絶対値の列に目を奪われないことだ。全エネルギーはどの行も \(-93.45\ \mathrm{Ry}\) 付近に貼りついていて、その数字をいくら睨んでも、どこで落ち着いたかは読み取れない。判断の材料は右の二列――差――にある。\(12\times12\times12\) を基準にした最右列を上から追うと、\(4\times4\times4\) はいきなり \(94\ \mathrm{meV/atom}\) も外れている。そこから \(6\times6\times6\)\(11.9\)\(8\times8\times8\)\(1.9\)\(10\times10\times10\)\(0.29\ \mathrm{meV/atom}\) と、一段刻むごとにおよそ一桁ずつ詰まっていく。隣接差の列も同じ物語で、\(82,\ 10,\ 1.6,\ 0.3\ \mathrm{meV/atom}\) と縮んでいく。差が縮んで頭打ちになるこの形は、前章の ecutwfc で見たものとそっくりだ。

だが、縮む速さはまるで違う。波の解像度の側では、ecutwfc を 40 Ry も積めば原子あたりの差は \(0.7\ \mathrm{meV}\) ほどに収まっていた。ところが周期の標本化の側は、いちばん粗い \(4\times4\times4\) がいきなり \(94\ \mathrm{meV/atom}\) も外している。\(0.7\)\(94\)――同じ「刻み」と呼びながら、二つのつまみが同じ精度に届くまでの手間は二桁も違う。実空間の波は速く収束し、波数空間の標本化は遅く収束する。差で読むという作法は共通でも、k 点に求められるメッシュの目はずっと細かい。

既約 k 点数の列は、この遅さの裏側を見せている。\(4\times4\times4\) の生メッシュは \(4^3=64\) 点だが、ダイヤモンド型の高い対称性が効いて、実際に解くのは \(8\) 点まで畳まれる。\(12\times12\times12\) でも、生の \(1728\) 点が \(72\) 点だ。対称性は点数を大きく圧縮してくれるが、それでも meV/atom の精度を出すには、\(8\times8\times8\)\(29\) 点)から \(10\times10\times10\)\(47\) 点)あたりが要る。研究で全エネルギーを論じるなら、このあたりを起点に取ることが多い。絶対値ではなく差で止め時を読むこと、そして値は擬ポテンシャルや ecutwfc の選び方で動くことを忘れず、自分の計算で一度この表を引き直して、二つのつまみの速さの違いを自分の目で確かめてほしい。

なぜ半導体のシリコンは、金属より緩いメッシュで足りるのか。鍵は占有のなめらかさにある。物理量の積分は、電子が詰まった状態の寄与を BZ 全体で足し上げる操作だった。シリコンでは、満たされたバンドと空のバンドのあいだのギャップが、ゾーンのどの \(\mathbf{k}\) でも開いている。だから占有は、価電子帯では \(1\)、伝導帯では \(0\) と、ゾーンのどこでも同じ値をとる。被積分関数はなめらかで、少ない点でも形をよく捉えられる。一方、金属ではフェルミ準位がバンドを横切り、占有はフェルミ面を境に \(1\) から \(0\) へ急に落ちる。この段差は波数空間の鋭い特徴で、その位置を捉えるには密な点(と、しばしばスメアリングという工夫)が要る。なめらかな積分ほど少ない点で足りる――それでもシリコンで meV/atom の精度まで詰めるには \(8\times8\times8\)\(10\times10\times10\) が目安で、占有が段差をもつ金属なら、さらに密な点を求められることも多い。

小課題 6.1

  1. 上の収束表を使う。全エネルギーを「\(12\times12\times12\) との差が \(10\ \mathrm{meV/atom}\) 以内」に収めたい。これを満たす最も粗いメッシュはどれか。さらに目標を \(1\ \mathrm{meV/atom}\) に厳しくしたら、どのメッシュを選ぶか。

  2. 同じ精度を狙うとき、半導体のシリコンは金属のアルミニウムより粗いメッシュで足りることが多い。その理由を、占有がブリュアンゾーンの中でどう変わるか、という言葉で説明せよ。

解答例

  1. どちらも「\(12\times12\times12\) との差」の列を上から読み、目標を初めて下回るメッシュを探す。\(10\ \mathrm{meV/atom}\) 目標では、\(4\times4\times4\)\(94\ \mathrm{meV}\)\(6\times6\times6\)\(11.9\ \mathrm{meV}\) とまだ超えており、\(8\times8\times8\)\(1.9\ \mathrm{meV}\) で初めて条件を満たす。隣接差も、\(6\times6\times6\) から \(8\times8\times8\) への \(10\ \mathrm{meV/atom}\) が、\(8\times8\times8\) から \(10\times10\times10\) への \(1.6\ \mathrm{meV/atom}\) へと落ちていて、落ち着きが見える。よって \(8\times8\times8\)\(1\ \mathrm{meV/atom}\) に厳しくすると、\(8\times8\times8\)\(1.9\ \mathrm{meV}\))はまだ届かず、\(10\times10\times10\)\(0.29\ \mathrm{meV}\) で初めて満たす。次段 \(12\times12\times12\) への変化も \(0.29\ \mathrm{meV}\) と十分小さい。よって \(10\times10\times10\) を選ぶ。

  2. 物理量は占有された状態の BZ 積分である。シリコンはゾーンのどの \(\mathbf{k}\) でもギャップが開いているため、占有は価電子帯で \(1\)、伝導帯で \(0\) と、どこでも一定。被積分関数がなめらかなので、少ない k 点でも積分をよく近似できる。金属ではフェルミ面でバンドが切られ、占有が \(1\) から \(0\) へ急に変わる段差ができる。この鋭い構造を捉えるには密な点が要る。なめらかさの差が、必要な k 点密度の差を生む。

よくある誤解

ecutwfc も k 点も十分に上げて値が動かなくなったら、その数字こそシリコンの真の姿だ――そう読みたくなる。だが収束が保証するのは、ひとつ手前のことである。刻みをいくら細かくしても答えがもう動かない、それは自分が立てた方程式を、刻みのせいで歪めずに解き切ったという保証だ。ここまでは確かに言える。残るのは別の問いだ。その「自分が立てた方程式」――選んだ近似――が、本物のシリコンをどこまで写しているか。バンドギャップが、この問いを最も鋭く突きつける。収束し切った計算でも、ギャップは約 \(0.6\ \mathrm{eV}\) と出る。教科書の約 \(1.1\ \mathrm{eV}\) のおよそ半分だ。この差の出どころは刻みではなく、方程式そのものの側にある。だから、メッシュをさらに細かくしても差は埋まらない。いまは「収束は必要だが、それだけで本物の保証にはなりきらない」とだけ握っておけばよい。決着は第9章でつける。

5 この章のまとめ

二つ目のつまみが手に入った。

  • 実空間の周期性は、波数 \(\mathbf{k}\) という第二の空間を生む。電子の状態は連続な \(\mathbf{k}\) の上に広がり、物理量はブリュアンゾーン全体にわたる \(\mathbf{k}\) の和(積分)として決まる。
  • 逆格子は「周期のものさし」であり、BZ の広さはおおよそ \(2\pi/a \approx 1.16\ \mathrm{\text{Å}^{-1}}\)。k 点メッシュ(例 \(6\times6\times6\)、Monkhorst–Pack)は、その連続な積分を有限個の点で代表させる標本化である。
  • k 点収束は ecutwfc と同じく差で読む。メッシュを一段刻んだときの変化が、目当ての精度を下回ったら止める。ただし収束の速さは大きく違う。ecutwfc が 40 Ry で原子あたり \(0.7\ \mathrm{meV}\) まで落ちるのに対し、k 点は \(4\times4\times4\)\(94\ \mathrm{meV/atom}\) も外し、meV/atom の精度には \(8\times8\times8\)\(10\times10\times10\) を要する。シリコンは占有がなめらかなぶん金属より緩いメッシュで足りるとはいえ、波の解像度ほど速くは収束しない。
  • 収束は、刻みのせいで答えを歪めずに解き切った保証である。それが本物のシリコンの保証になるかは別の問いで、第9章で向き合う。

ここまで、私たちは \(\mathbf{k}\) ごとのバンドエネルギー \(\varepsilon_n(\mathbf{k})\)すでに分かっているかのように、それを足し上げてきた。だが \(\varepsilon_n(\mathbf{k})\) を得るには、電子が動く場――ポテンシャル――が分かっていなければならない。そしてその場は、電子がどう配置したかが決めている。電子の配置が場を決め、その場がまた電子の配置を決める。この循環を、計算機はどうやって解くのか。次章で、そのつじつまの合わせ方を見にいく。