本書で導入した主要用語を、初出章ごとにまとめた。 各用語の定義は本書での用法に基づいており、他分野での用法とは異なる場合がある。
第1章 見えたことと、そこから言えること
| 観測 |
observation |
感覚器官や測定器で直接確認できた事実の記述。解釈を含まない |
| 解釈 |
interpretation |
観測事実に意味づけや推論を加えた記述 |
| 未確定 |
undetermined |
手元のデータでは観測とも解釈とも判断できない記述。追加情報が必要 |
| 検証可能な問い |
testable question |
対象・条件・測定方法が明示され、実験や観察で答えられる問い |
| 条件付き主張 |
qualified claim |
いつ・どこで・何と比べたとき成り立つかを示した主張。断言の対義語 |
第2章 主張を支える三つの柱
| CER |
Claim-Evidence-Reasoning |
主張・証拠・理由づけの三要素からなる論証の基本構造 |
| 主張 |
claim |
問いに対する答えであり、条件・対象・結論が明示されたもの |
| 証拠 |
evidence |
主張を支える具体的な事実やデータ。主張の言い換えや感想は証拠にならない |
| 理由づけ |
reasoning |
なぜその証拠がその主張を支えるかを、物理原理などを用いて説明する部分 |
第3章 グラフは何を語り、何を語らないか
| 位置−時間グラフ |
position-time graph |
横軸を時間、縦軸を位置として物体の運動を表したグラフ。傾きが速度を意味する |
| 速度−時間グラフ |
velocity-time graph |
横軸を時間、縦軸を速度として物体の運動を表したグラフ。傾きが加速度を意味する |
| 軸 |
axis |
グラフの横軸・縦軸。読む前に「何を表すか」「単位」「範囲」を必ず確認する |
| 誤解を招くグラフ |
misleading graph |
軸の切断・単位の不在・見出しの言いすぎなどによって誤った印象を与えるグラフ |
第4章 断言を、条件つきの主張へ
| 断言 |
categorical claim |
「いつでも」「必ず」など条件なしに一般化した主張。反例に弱い |
| 反例 |
counterexample |
主張が成り立たないことを示す具体的な事例。条件の違う場面とは区別する |
| 比較条件 |
comparative condition |
「何と何を比べているか」を明示する隠れた条件の一種 |
| 環境条件 |
environmental condition |
実験・観察が行われる場の物理的状況(温度・摩擦・空気など)に関する隠れた条件 |
| 定義・測定条件 |
definitional/measurement condition |
主張に含まれる言葉の意味とその測り方に関する隠れた条件 |
第5章 モデルは「嘘」ではなく、道具である
| モデル |
model |
目的に応じて現象を意図的に単純化したもの。必要な性質だけを残し、不要な性質を捨てる |
| 質点モデル |
point-mass model |
物体の大きさ・形・回転を無視し、質量が一点に集まっているとみなすモデル |
| 無摩擦斜面モデル |
frictionless incline model |
斜面上の摩擦をゼロとみなして力学を扱うモデル |
| 理想ばねモデル |
ideal spring model |
ばねの質量・非線形性を無視し、フックの法則が完全に成り立つとみなすモデル |
| モデルの前提 |
model assumption |
モデルが成り立つために必要な条件。第4章の「隠れた条件」と対応する |
| モデルの破綻 |
model breakdown |
予測と実測のずれ・矛盾・無視した要素の肥大化など、モデルが有効でなくなるサイン |
第6章 何を変え、何を固定すればよいか
| 独立変数 |
independent variable |
実験者が意図的に変化させる変数。原因側に当たる |
| 従属変数 |
dependent variable |
独立変数の変化に応じて変わる変数。結果側に当たる |
| 統制変数 |
controlled variable |
実験中に一定に保つ変数。独立変数以外の影響を排除するために固定する |
| 公平な比較 |
fair test |
独立変数だけを変え、統制変数をそろえた比較実験の設計 |
第7章 同じ現象を、同じ内容で語れているか
| 複数表現 |
multiple representations |
同一の現象を言葉・力の図・グラフ・式など複数の形式で記述すること |
| 力の図 |
force diagram |
物体にはたらく力を矢印で示した図。力の向きと大きさを可視化する |
| 表現同士の整合性 |
consistency across representations |
異なる表現(言葉・図・グラフ・式)が同じ内容を語っているかを確認すること |
第8章 どこまでなら言えるのか
| 平均 |
mean / average |
複数の測定値の和をデータ数で割った値。データの代表値として使う |
| 範囲 |
range |
測定値の最大値と最小値の差。ばらつきの大きさを示す指標 |
| ランダムなばらつき |
random error |
測定のたびに無作為に変動する誤差。測定回数を増やすことで平均が真値に近づく |
| かたよったずれ |
systematic error |
特定の方向に一定量ずれる誤差。測定回数を増やしても除去できない |
| 再現性 |
reproducibility |
同じ条件で異なる測定者・機会に行っても同様の結果が得られる性質 |
| 不確かさ |
uncertainty |
測定値に本質的に伴うばらつきの大きさ。測定の限界を示す |
| 限定つきの結論 |
qualified conclusion |
データの質に見合った強さで書いた結論。過剰な一般化を避ける |
第9章 説明の骨組みを見えるようにする
| 六要素 |
six elements (Toulmin) |
トゥールミンの論証モデルにおける主張・根拠・橋渡し・裏づけ・限定・反駁の六つ |
| 根拠 |
grounds |
主張を支えるデータや事実。CERの「証拠」に対応する |
| 橋渡し(ワラント) |
warrant |
根拠から主張が導ける理由を示す推論規則 |
| 裏づけ(バッキング) |
backing |
橋渡しそのものを支える法則・原理・一般知識 |
| 限定(クォリファイア) |
qualifier |
主張がどの範囲・程度で成り立つかを示す語句 |
| 反駁(リバッタル) |
rebuttal |
主張が成り立たない例外的な条件を先回りして示す部分 |
| 論証分解マップ |
argument map |
論証の六要素を図式化し、弱い部分を視覚的に診断するための図 |
第10章 たとえは、どこまで助けになり、どこで誤解を生むのか
| 類比(アナロジー) |
analogy |
未知の現象を説明するために、別の現象との対応関係を利用する方法 |
| 対応表 |
correspondence table |
類比において元の系・対応先・対応の根拠を三列で整理した表 |
| 破綻点 |
breakdown point |
類比が成り立たなくなる箇所。対応先にない構造を元の系に押しつけたときに現れる |
第11章 もっともらしい説明を、どう公正に疑うか
| 慈悲の原理 |
principle of charity |
他者の主張を批判する前に、最も筋の通る形に言い直す手続き |
| 藁人形論法 |
straw man fallacy |
相手の主張を弱い形にすり替えて攻撃する誤った批判の形 |
| 早すぎる一般化 |
hasty generalization |
限られたデータや一部の事例から全体に飛躍する誤り |
| 偽二分法 |
false dichotomy |
実際には他の選択肢があるのに、二択しかないように見せる誤り |
| チェリーピッキング |
cherry picking |
都合のよいデータだけを選び、不都合なデータを無視する誤り |
| モデルと現実の混同 |
conflation of model and reality |
モデルの結論をそのまま現実に当てはめ、前提条件を無視する誤り |
| 因果と相関の混同 |
correlation-causation confusion |
二変数が相関していることから、一方が他方の原因だと断定する誤り |
| 公正な査読文 |
fair peer review |
慈悲の原理・弱点の特定・立て直し提案・改善方向を備えた批判文 |
第12章 科学を、社会に届く形で語る
| 問いの翻訳 |
translating questions |
漠然とした社会的判断の問いを、比較可能で測定可能な物理の問いに変換すること |
| 資料の信頼性 |
source reliability |
出典・査読の有無・公表された文脈に基づく、データの信頼度の評価 |
| 資料の関連性 |
source relevance |
手元の資料が問いに答えるのに実際に役立つかの判断 |
| 収束 |
convergence |
複数の独立した資料が同じ方向の結論を示すこと。単一資料より強い根拠になる |
| 提言文の構成 |
proposal structure |
問いの翻訳・資料評価・比較・収束・反論・実施条件・結論を備えた社会提言文の形式 |