教育・指導方針

研究室の指導方針

私の研究室では、学生の皆さんが自主的に研究に取り組み、実験、結果のまとめ、議論、背景の学習、プレゼンテーション技術の習得などを通して、基礎的な能力を身につけることを目指しています。以下に、研究指導における私の役割と方針をまとめました。

  1. 研究テーマの提供
  • 高専5年生の立場とスキルを考慮し、適切と思われる研究テーマを提供します。
  • 提供するテーマは、重要で未解決の問題であり、研究室のリソースを踏まえて実現可能性のあるものです。
  • 学生の希望により、研究テーマの変更についても柔軟に対応します。ただし、研究室の状況から実現可能なものに限ります。
  1. スケジューリングと目標設定
  • 春休みから研究をスタートします。
  • 研究の最終目的を明確にし、それに向けた大まかなスケジュールを提示します。
  • 学会発表や卒業研究発表などの具体的な目標を設定し、それに向けて計画的に研究を進めるよう指導します。
  • 最近は、11月頃の国際会議(STI-GIGAKU)での発表を目指しています。
  1. 研究に関する議論とサポート
  • 研究の計画や問題解決に関する議論には積極的に応じます。一緒に解決策を探っていく姿勢で臨みます。
  • 実験や解析に必要な機器や資源の手配については、可能な限りサポートします。
  • 学会参加に伴う費用は、研究室で負担します。
  1. 共同研究と他研究室との連携
  • 最近、長岡技術科学大学の小松先生と共同研究を行っており、夏休みには長岡技術科学大学を訪問し、実験を行います。
  • 11月には、長岡技術科学大学が主催する国際会議(STI-GIGAKU)で研究成果を発表します。これらの活動に伴う旅費は研究室から支給します。
  • 茨城高専の小野寺先生、安藤亮先生、片岡先生とは研究テーマが近いこともあり、連携を深めていきます。情報交換などを通して、研究の質の向上を図ります。
  1. 研究に必要な知識とスキルの習得
  • 研究を進める上で必要な知識やスキルについてアドバイスします。
  • 学生自身が主体的に学習し、必要な知識とスキルを身につけることを期待しています。
  • 最新の研究動向についても、私から情報提供はしますが、詳細は学生自身で把握してもらいます。
  1. 学会発表・論文執筆の指導
  • 学会発表や論文執筆に関しては、クオリティ向上のため、発表練習や論文の添削など、指導を行います。
  • 特に、卒業後も自立して研究を継続できる能力の育成を重視します。
  1. 研究室運営と全体調整
  • 研究室内で個人の利益と全体の利益が衝突しないよう、適切な調整を行います。
  • 研究室運営や後輩指導などの負担が特定の学生に偏らないよう配慮します。
  • 研究室のルールについては明確に伝達し、改善提案があれば真摯に検討します。
  • 研究室運営において、学生一人一人の強みを活かし、お互いの個性を理解し合うことを重視しています。そのため、研究経費に余力がある場合には、「クリフトンストレングス」のアセスメントを研究室の全員に受けてもらうことにしています。結果は私の結果も含めて研究室内で共有し、それぞれの強みを活かした役割分担や、円滑なコミュニケーションに役立てます。可能であれば、4月の早い段階でアセスメントを実施し、研究活動のスタートダッシュを切れるようにしています。なお、アセスメントの実施については、原則全員に受けていただくことを想定していますが、心理テストに抵抗がある場合など、個別の事情には柔軟に対応いたします。
  1. 指導教員の強み
    私自身の強みや価値観を理解するために、クリフトンストレングス(CliftonStrengths®)とVIA-Total24のアセスメントを受けました。これらの結果を研究室の運営や学生の皆さんの指導に活かしていきたいと考えています。
    クリフトンストレングスの上位5つの強みは、以下の通りです。
    1.戦略性:将来を見据え、目標達成のための計画を立てることを得意としています。
    2.活発性:精力的に活動し、新しいことにチャレンジすることを楽しんでいます。
    3.学習欲:新しい知識や技術を積極的に学ぼうとする姿勢を持っています。
    4.着想:新しいアイデアを生み出すことが得意で、創造的な問題解決を心がけています。
    5.親密性:人との深い絆を大切にし、信頼関係を築くことを重視しています。
    また、VIA-Total24の結果では、以下の5つの強みが上位に挙げられました。
    1.創造性:新しいアイデアを生み出し、独創的な方法で物事に取り組むことを得意としています。
    2.審美眼:美しさや卓越性を認識し、それらを尊重する姿勢を持っています。
    3.誠実さ:真摯に物事に向き合い、責任を持って行動することを大切にしています。
    4.向学心:新しいことを学ぶことに情熱を持ち、自己成長を追求しています。
    5.希望:前向きな態度で未来を見据え、可能性を信じることを心がけています。
    これらの強みや価値観は、研究室運営において重要な役割を果たすと考えています。戦略性や創造性を活かして研究テーマを設定し、活発性と向学心を持って新しいことにチャレンジする姿勢を促進します。また、誠実さと親密性を大切にすることで、学生の皆さんとの信頼関係を築き、良好なコミュニケーションを図ります。これらの強みを活かしながら、学生の皆さん一人一人の個性や可能性を引き出し、研究活動を通じて成長を支援していきたいと思います。
  2. 研究を通じて培った力とキャリア形成

    物性物理(実験)の研究を通して、専門知識や技術だけでなく、未知の問題に取り組む姿勢や学習方法、仕事の進め方など、将来のキャリア形成に役立つ多くの力を身につけることができます。研究室で取り組む内容が、必ずしも将来の仕事内容と直結している必要はありません。むしろ、研究活動を通じて培った自律的な学習能力や問題解決能力は、社会に出てからも様々な場面で活かすことができると考えています。
    私たちの研究室では、学生の皆さんが研究を通じて自立心や問題解決能力を養い、将来のキャリア形成に役立つ基礎を築くことができるよう、サポートいたします。研究活動を通じて得た知識や経験を、進学先や就職先で存分に発揮していただきたいと思います。

学生の皆さんが研究を通じて自立心や問題解決能力を養い、基礎を築くことができるよう、サポートします。時間のかかる実験などの最中は、その間も研究室の居室を活用して、自主的に学習を進めてください。皆さんが主体的に研究に取り組み、成長していく姿を楽しみにしています。

授業における指導方針

教育・指導における基本的な考え方は、学生一人一人の個性や能力を尊重し、主体的な学びを促進することです。学生が自分のペースで学習を進め、理解を深めていけるような環境を整えることを心がけています。また、学生の興味や関心を引き出し、学ぶ意欲を高めるよう努めています。

以下、授業における具体的な方針です。

  • 対面授業とオンデマンド動画を組み合わせたハイブリッド型の授業を実施しています。学生は各自のペースで動画を視聴しながら、ノートやPDFに書き込んでまとめを作成します。
  • 授業中は教室を巡回し、学生の質問に答えたり、まとめに対してコメントしたりすることで、一人一人の理解度に合わせた指導を行っています。
  • 学生の要望に応じて、教室以外の寮の自室や図書館など、どこでも授業を受けられるようにしています。集中できる環境で学習できるよう配慮しています。
  • 学生の主体的な学びを促進するため、まとめ方のコツを伝えたりするなど、能動的な学習を支援しています。
  • 令和6年度からは、授業内容に関連したPythonプログラムの提供を検討しています。実現できれば、学生がプログラミングを通して物理の概念を体験的に理解できるよう、実践的な学習の機会を設けたいと考えています。

また、私の授業では、説明は日本語で行いますが、テキストは全て英語を使用しています。この取り組みには以下のような経緯があります。

  1. 第9代校長の日下部治先生と第10代校長の喜多英治先生から、英語テキストの導入について強い推奨があったこと。
  2. 平成29年の国際創造工学科への改組に伴い、英語の必要性がさらに高まったこと。
  3. R. D. Knight先生の著書に触れ、英語による説明の丁寧さと問題の面白さに感銘を受けたこと。日本語の書籍だけでは視野が狭くなることを認識したこと。
  4. 平成31年(令和元年)から授業テキストを英語に切り替え、読解力の向上に注力していること。

英語テキストを使用することで、学生は物理の概念を英語で理解し、国際的なコミュニケーションに必要な語学力を身につけることができます。また、英語圏の優れた教材に触れることで、学習内容の質の向上も期待できます。

本授業のスタイルは、edXやCourseraなどのオンライン学習プラットフォームで提供されている講座と類似していますが、大きな違いは、私が教室で直接学生の質問に答えられる点です。オンライン学習プラットフォームでは得られない、対面指導ならではのサポートも提供できます。また、本授業を通して英語のテキストを読み込み、日本語の説明を聞きながら学ぶ学習スタイルに習熟することで、学生は自律的にオンライン講座を受講する際の心理的ハードルを下げることができます。特にCourseraは多くの講座で日本語字幕が提供されているため、本授業から自然な流れでステップアップできると考えられます。本授業とオンライン講座を組み合わせることで、学生は物理学の知識を深めながら、英語力や自律的な学習能力も同時に伸ばすことを期待しています。

私自身、英語学習には多くの苦労がありました。大学の研究室では、英語の論文を読むのに多大な努力を要しました。大学院では、海外の研究者から実験方法を英語で学ぶ機会がありましたが、言葉の壁に苦しむことも多々ありました。論文を英語で書く際には、指導教官に多大なご負担をおかけしてしまいました。国際会議での発表や現地の研究者との会話でも、言葉の壁に阻まれ、苦戦の連続でした。

これらの経験から、私は英語力の重要性を痛感するとともに、早い段階から英語に触れることの意義を実感しています。学生の皆さんには、私が経験したような苦労を味わってほしくないと思っています。そのため、英語テキストを使用した授業を通じて、早い段階から英語に親しみ、物理の専門知識を英語で学ぶ機会を提供したいと考えています。

現在、グローバル化が急速に進む社会において、英語でのコミュニケーション能力は必須のスキルとなっています。学生の皆さんには、英語テキストに積極的に取り組み、グローバルな視野を持って物理学を学んでいってほしいと思います。英語の読解力向上は、将来の研究活動やキャリアにおいても大きな財産になるでしょう。私も、自身の経験を活かし、学生の皆さんが英語テキストを通じて、物理学の深い理解と国際的な競争力を身につけることができるようサポートいたします。

英語学習の過程では、困難に直面することもあるかもしれません。しかし、そのような困難を乗り越える経験は、将来、グローバルな舞台で活躍する上で貴重な財産となります。私自身、英語学習の過程で得た粘り強さや困難を乗り越える力は、研究活動や国際的なコミュニケーションの場面で大いに役立ってきました。皆さんには、私の経験を参考に、英語学習に粘り強く取り組んでいってほしいと思います。

学生の皆さんが主体的に学び、自分の可能性を最大限に発揮できるよう、サポートいたします。一人一人の個性を大切にしながら、共に学び、成長していくことを楽しみにしています。